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ダウンロード 1 \documentclass[11pt、a4paper]{jsarticle}
2
3 \begin{document}
4 \pagestyle{empty}
5 % \title{}
6 % \author{}
7 % \date{年月日}
8
9 % \maketitle
10
11 \section{目的}
12
13 ボルダの振り子を用いて振り子の周期を精密に測定する事により、 重力加速度を 4 桁の精度で測定する。
14
15 \section{原理}
16
17 \subsection{振り子の周期}
18
19 鉛直線を含む平面上振動する単振り子を考える。 振り子の長さを $h$ とすると、
20 その周期 $T$ は次式で表される。
21
22 \begin{equation}
23 T = 2 \pi \sqrt{\frac{h}{g}}
24 \end{equation}
25
26 この式を変形すると次式となり、 振り子の周期 $T$ を測ることによって重力加速度を求めることができるのが分かる。
27
28 \begin{equation}
29 g = \frac{4 \pi^2 h}{T^2}
30 \end{equation}
31
32 振り子の長さを $h = 1$ m とすると、 周期は約 2 秒 になる。
33 振り子の長さを不確かさ 1 mm 以内の精度で測るのは容易である。
34 しかしストップウォッチなどを用いて周期を測定した場合、周期の不確かさは 1/200 程度であり
35 $g$ を求める式の中に周期は 2 乗の形で入っているので $g$ の不確かさは 1/100 となる。
36 この方法では$g$に対して$0.1\ \mathrm{m/s^2}$ほどの不確かさが生じることになる。
37
38 この例より、$g$ をより精密に測るためには周期をもっと高精度で測定する必要がある。
39
40 \subsection{周期の精密測定}
41
42 約 2 秒の周期で振動している振り子を正確に $T_0 = 2$ s 毎の光パルスで照明するとする。
43 薄暗い視野の中で振動を観測すると振り子の周期 $T$ が正確に $T_0 = 2$ s でないとすると、
44 2 秒ごとに光パルスで照らされているときの位置は少しずつずれていく。
45
46 望遠鏡でのぞいていると 2 秒ごとに輝く金属線が視野の中を長い周期で左右に往復する。
47 この長い周期 $\tau$ を測ると振り子の周期 $T$ は次式から求めることができる。
48
49 \begin{equation}
50 \frac{1}{T_0} - \frac{1}{T} = \frac{\pm 1}{\tau}
51 \end{equation}
52
53 \begin{equation}
54 T = T_0 \pm \frac{T_0^2}{\tau \mp T_0}
55 \end{equation}
56
57 符号は $ T < T_0 $ のときは下を、 $ T > T_0 $ のときは上をとる。
58
59 周期 $T$ の不確かさを $\Delta T$ とすると、 $\Delta T$は次式で計算できる。
60
61 \begin{equation}
62 \Delta T = \frac{T_0^2}{(\tau \pm T_0)^2} \Delta \tau \cong \frac{4}{\tau^2} \Delta \tau
63 \end{equation}
64
65 この方法で周期がどのくらいの精度で測定できるかを考える。 $ \tau = 200$ s とし
66 その不確かさ $ \Delta \tau = 1$ s とする。 このとき振り子の周期の不確かさ
67 $ \Delta T \cong (T_0/\tau)^2 \Delta \tau $ は $(2/200)^2 \times 1$ s $= 10^{-4}$ s である。
68
69 つまり周期の相対的な不確かさは $ \Delta T/T \cong 5 \times 10^{-5} $ である。
70
71 \subsection{精密測定に伴う問題}
72
73 周期の式は次の仮定のもとに導かれたものである。
74
75 \begin{itemize}
76 \item おもりの大きさが無視できる。
77 \item 振動の振幅が十分に小さい。
78 \end{itemize}
79
80 $10^{-4}$ の精度が問題となると重りの大きさや振り子の振幅の影響も考慮しなければならなくなる。
81
82 おもりを半径 $r$ の球とし振り子の最大振れ角を $ \theta $ とすると周期は次式で表されることが知られている。
83
84 \begin{equation}
85 T = 2 \pi (1 + \frac{\theta^2}{16}) \sqrt{\frac{h}{g} (1 + \frac{2 r^2}{5 h^2}) }
86 \end{equation}
87
88 $g$ についてとくと次式が得られる。
89
90 \begin{equation}
91 g = \frac{4 \pi^2 h}{T^2} (1 + \frac{2r^2}{5h^2} + \frac{\theta^2}{8})
92 \end{equation}
93
94 振角 $\theta$ は、 スケール上の振幅 $a$ と支点からスケールまでの距離 $l$ で
95 $\theta \cong \tan{\theta} = a/l$と計算される。
96
97 周期の測定を始めるときの振幅 $a_i$、 と終えたときの振幅 $a_f$を測定し、
98 $\theta^2 = a_i a_f / l^2$ として本実験では次式で重力加速度 $g$ の値を計算する。
99
100 \begin{equation}
101 g = \frac{4 \pi^2 h}{T^2} (1 + \frac{2r^2}{5h^2} + \frac{a_i a_f / l^2}{8})
102 \end{equation}
103
104 以下のような配慮をすれば重力加速度を不確かさ $\pm 0.1$ cm/s$^2$ で求めることができる。
105
106 ここで $h$ は金属球の中心から吊り金具 A の支点の下端までの長さであり、
107 金属球の下から吊り金具 A の支点の下端までの長さを $h'$としたとき
108 $h = h`-d/2$ で計算される。
109
110 また $h$ の不確かさを $\Delta h$ とすると、 $\Delta h$ は次式で計算される。
111
112 \begin{equation}
113 \Delta h = \sqrt{(\Delta h^{\prime})^2 + (\frac{\Delta d}{2})^2}
114 \end{equation}
115
116 重力加速度 $g$ の不確かさ $\Delta g $ は、 $\Delta h$、 $\Delta T$ を用いて
117
118 \begin{equation}
119 \Delta g = g \sqrt{(\frac{\Delta h}{h})^2 + (\frac{2\Delta T}{T})^2}
120 \end{equation}
121
122 と計算される。
123
124 \section{実験方法}
125
126 以下のような手順で実験を行った。
127
128 \begin{itemize}
129 \item ノギスを用いて金属球の直径 $d$ を測定した。
130 \item 備え付きの三脚台 B を固定台 C の上において水準器を用いて三脚台の上面を水平にした。
131 \item 針金を付ける前の吊り金具 A を三脚台の上に乗せて振動させた。
132 この振動の周期がおよそ 2 秒になるように調整用ナット $A_1$ を回し調整した。
133 \item 調整後吊り金具 A に吊り線をつけ、 その吊り線の他端に金属球をつけた。
134 \item 金属球の下から吊り金具 A の支点の下端までの長さ $h$' を金尺で測定した。
135 \item 針金と金属球を取り付けた吊り金具 A を三脚台 B にセットして振動させた。
136 その周期がおよそ 2 秒であることを確認した。
137 \item 望遠鏡を覗いて振動の振幅 a を測定した。
138 \item 振動の中心近くに基準線を設定し光パルスを照射した。
139 輝線がその基準線に一致してから、 1 周期移動するまでの時間 $\tau$ を1回測定した。
140 \item 測定を終えた後もう一度 $h$' を測定し、 変化がないことを確認した。
141 \item 針金の長さを少し短くした後、 同様の測定をもう一度行った。
142 \end{itemize}
143
144 \section{実験結果}
145
146 \begin{itemize}
147 \item 1回目の実験
148 \end{itemize}
149
150 金属球の直径 d は d = 31.72 mm
151
152 金属球の直径の不確かさ $ \Delta d = 0.05$ mm
153
154 金属球の下から吊り金具 A の支点の下端までの長さ $h' = 1025.3$ mm
155
156 金属球の中心から吊り金具 A の支点の下端までの長さ $h = h^{\prime} - d/2 = 1009.4$ mm
157
158 $h^{\prime}$ の不確かさ $ \Delta h^{\prime} = 0.1$ mm
159
160 吊り金具 A の支点下端から基準線までの長さ $l = 886.3$ mm
161
162 測定を開始するときの振動の振幅 $ a_i = 57.5$ mm
163
164 測定が終了したときの振動の振幅 $ a_f = 25.5$ mm
165
166 輝線の振動周期 $\tau = 236$ s、 振動周期の不確かさ $\Delta \tau = 2 $ s
167
168 周期 $T$ は (4) 式から、
169
170 \[ T = 2 + \frac{4}{236-2} = 2.01709 \ \mathrm{s} \]
171
172 と求められる。
173
174 重力加速度 $g$ は(8)式から、
175
176 \[ g = \frac{4 \pi^2 \times 1.0094}{2.01709^2} (1 + \frac{2 \times 15.86^2}{5 \times 1009.4^2} + \frac{57.5 \times 25.5 / 886.3^2}{8}) = 9.79753 \ \mathrm{m/s^2}\]
177
178 と求められる。
179
180 周期 $T$ の不確かさ $ \Delta T $ は (5)式から
181
182 \[ \Delta T = \frac{4}{236^2} \times 2 = 0.0001436368 \ \mathrm{s} \]
183
184 と求められる。
185
186 金属球の中心から吊り金具 A の支点の下端までの長さ $h$ の不確かさ $\Delta h$ は (9)式から
187
188 \[ \Delta h = \sqrt{0.1^2 + (\frac{0.05}{2})^2} = 0.103 \ \mathrm{mm}\]
189
190 したがって重力加速度の不確かさは(10)式より
191
192 \begin{eqnarray*}
193 \Delta g &=&9.79753 \times \sqrt{(\frac{0.103}{1009.4})^2 + (\frac{2 \times 0.0001436368}{2.01709})^2} \\
194 &=& 0.001716... \ \mathrm{m/s^2}
195 \end{eqnarray*}
196
197 よって重力加速度 $g$ は
198
199 \[ g = (9.706 \pm 0.002) \ \mathrm{m/s^2} \]
200
201 と求められた。
202
203 \begin{itemize}
204 \item 2回目の実験
205 \end{itemize}
206
207 金属球の直径 d、 金属球の直径の不確かさ $ \Delta d $、 吊り金具 A の支点下端から基準線までの長さ $l$ は 1回目と共通であった。
208
209 金属球の下から吊り金具 A の支点の下端までの長さ $h' = 990.0$ mm
210
211 金属球の中心から吊り金具 A の支点の下端までの長さ $h = h^{\prime} - d/2 = 974.2$ mm
212
213 $h^{\prime}$ の不確かさ $ \Delta h^{\prime} = 0.1$ mm
214
215 測定を開始するときの振動の振幅 $ a_i = 58.5$ mm
216
217 測定が終了したときの振動の振幅 $ a_f = 38.0$ mm
218
219 輝線の振動周期 $\tau = 160$ s、 振動周期の不確かさ $\Delta \tau = 2$ s
220
221 であった。
222
223 1回目と同様に計算すると
224
225 周期 $T$ は $T = 2.02532$ s、 周期 $T$ の不確かさ $\Delta T$ は $\Delta T = 0.0003125 \ \mathrm{s}$
226
227 重力加速度 $g$ は $g = 9.38037464 \ \mathrm{m/s}$
228
229 金属球の中心から吊り金具 A の支点の下端までの長さ $h$ の不確かさ $\Delta h$は $\Delta h = 0.103 \ \mathrm{mm} $
230
231 重力加速度の不確かさ $\Delta g$ は $\Delta g = 0.003060$
232
233 よって重力加速度 $g$ は
234
235 \[ g = (9.380 \pm 0.003) \ \mathrm{m/s^2} \]
236
237 と求められた。
238
239 結果をまとめると以下の表に示すとおりである。
240
241 \begin{table}[htb]
242 \centering
243 \caption{重力加速度の値}
244 \begin{tabular}{cc} \\
245 1回目 $/ \mathrm{(m/s)}$ & 2回目 $/ \mathrm{(m/s)} $ \\
246 \hline
247 $(9.706 \pm 0.002)$ & $ (9.380 \pm 0.003)$ \\
248 \end{tabular}
249 \end{table}
250
251
252 \section{考察}
253
254 \subsection{実験結果について}
255
256 1回目の実験で得られた重力加速度の値は $ (9.706 \pm 0.002) \ \mathrm{m/s}$、
257 2回目の実験で得られた重力加速度の値は $ (9.380 \pm 0.003) \ \mathrm{m。s}$ であった。
258
259 両者の値は不確かさの範囲が互いに重なっていない。 その理由を考察する。
260 考えられる理由は金属球の下から吊り金具 A の支点の下端までの長さを金尺で測った際に
261 不確かさを最小目盛りの十分の一である $0.1 \ \mathrm{mm}$ としたが、 実際にはより大きな値となっていた可能性である。
262 また、周期の精密測定の際に、端に到達したことが分かりづらく、実際と大きく離れている値を取ってしまったことなどが考えられる。
263
264
265 %\subsection{国内で重力加速度が最大または最小になる地点}
266 %
267 %重力は地球の引力と遠心力の合力である。 したがって地球を球とみなせば国内において重力加速度が最大となるのは最も極に近い北海道
268 %の最北端択捉島・カモイワッカ岬であり最小となるのは最も極から遠い最南端の沖ノ鳥島となると考えられる。
269 %
270 \section{参考文献}
271
272 \begin{itemize}
273 \item 基礎科学実験A(物理学実験) 平成29年度版
274 \end{itemize}
275
276 \end{document}
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